くらげたちへのレクイエム4

都内金融機関にて社会人7年目。 東京大学法学部卒。メインは読書記録を書いていく予定。▽キーワード:自己啓発、金融、野球、政治、M&A、競馬、AKB、大家志津香、異国のパルピタンテ、ヴィヴィアン・ゆん、dora☆dora、一色葵

『修羅場の経営責任―今、明かされる「山一・長銀破綻」の真実 』 国広 正

この本の書評を書く前に断っておくが、この書評については客観性や公平性が欠けている可能性は非常に高い。
この本と関連する企業とそれなりの関わりがあり、もしかしたら気づかぬうちに色眼鏡で見ている可能性は多分にある。
(そもそも、今までの書評や日記も主観的でかなり寄っているとは思うが)

筆者は弁護士であり、山一證券破産では第三者委員会の一員として、長銀破綻時は粉飾で起訴された経営陣の弁護団の一員として関与している。

山一證券事件では、なぜ飛ばしが実行され、飛ばしが発覚した時に経営陣がどのように行動したかが克明に書かれている。正義感に溢れ、例え自分が不利な立場に陥るとしても真相究明に協力する役員もふれば、自己の保身のために事なかれ主義と悪しき習慣に終始する役員もいる。
従来の日本においてはプロパー社員の最終目標は、役員(社長)に就任することであった。高度成長期であれば年功序列も正常に機能したのかもしれないが、高度成長も終焉を迎えかつての悪しき日本経営をしている余裕は今の日本には存在しない。今一度、「経営者になること」の意味を見直さなければならないと思う。取締役の椅子は、プロパー社員にとっての名誉と高給のシンボルではない。取締役に就任するということは、株主をはじめとしたステークホルダーに責任を負うということであり、経営に失敗すれば身ぐるみを剥がされるというくらいの覚悟が必要である。(ただし、あまりに規制を強化し、経営者の自由な判断を委縮させてしまっては元も子もないが)


一方で、長銀破綻は経営者の責任意識が強すぎたがために、社会的損失を招いた事例なのであると思う。
長銀の粉飾決算に関する無罪判決が確定したのは昨年である。判決要旨を読む機会があったが、事実判断が問題になったわけではないのに、よく一審&高裁で有罪を勝ち取ることができたと変に関心したものである。
確かに、長銀破綻処理に多くの血税が注入される結果となったのだから、誰かに責任を取ってほしい(=処罰したい)というのは人間感情であると思う。しかし、刑法解釈と感情論は全く別物であり、他人の判決で正当な裁判がなされるからこそ、自分の裁判も正当に実施されるであろうと安心できる。
「国策捜査」という言葉が数年前流行したが、まさに本件は国民感情の高まりを背景として検察が暴走した事例の一つである。本書では、長銀事件の当事者の視点からわかりやすく時系列で記載されており、事件の論点が何かは非常に分かりやすかった。


長銀の経営者たちは自らの経営責任への贖罪として、やってもいない粉飾を認め、中には自殺するものまで存在した。「自分が罪を認めれば、他の仲間が救われる」という発想や、「死んで詫びる」とい発想も個人的には嫌いではない。寧ろ、そのような武士道的発想は大好きである。
しかし、それにより真相の究明がなおざりのまま10年以上の年月が経過してしまったのである。破綻を避けることができない以上、破綻を社会にとって少しでも有益なものにするためには、徹底的な真相究明を実施し、シェアすることで他の企業の経営に生かすべきであった。金融機関は過度のリスクテイクを避けるべきという教訓がいかされていれば、リーマンショックの影響を少しは減らすことができたのかもしれない。
日本男児としてのプライドを守ることも結構だが、正しい責任の取り方を検討すべきであった。


2011年は東京電力、オリンパスと経営者の責任の取り方が問われた年であった。
あくまで個人としての見解であるが、天災に対する甘すぎる経営判断をした前者、粉飾という市場の最低限守るべきルールを破った後者には資本主義市場から退場願いたいのが本音である。ただ、退場すると周囲への影響が大き過ぎるがために延命がなされているのである。まさに、Too big to fail.という言葉がぴったりと当てはまる。
経営者たちは、そのことを肝に銘じて、なぜ誤った経営判断がなされたのか真相を究明し、社会とシェアすることで貢献するべきであると思う。

満足度
☆☆☆☆★


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  1. 2012/02/08(水) 00:32:45|
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