くらげたちへのレクイエム4

都内金融機関にて社会人7年目。 東京大学法学部卒。メインは読書記録を書いていく予定。▽キーワード:自己啓発、金融、野球、政治、M&A、競馬、AKB、大家志津香、異国のパルピタンテ、ヴィヴィアン・ゆん、dora☆dora、一色葵

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『懲戒解雇』高杉良

三菱油化がモデルとなる経済小説。
主人公は財閥系繊維メーカーの課長として、経営企画のエースと目されているが、ある役員と対立してしまう。更に自分の仲人であり理解者でもある役員が子会社への転出となり、対立する役員は専務へと昇格する。一方で、主人公や海外子会社を利用した不正を突き止め、その不正を建白書という形で告発する。
会社はそのもみ消しを図り、主人公の過去のルール違反を汲まなく調べ上げ、それを理由に主人公に懲戒解雇を突きつける。主人公は、自分の名誉を守るため、会社を訴えて対抗する。

日本の雇用慣行における「三種の神器」は終身雇用、年功序列型賃金制、新卒一括採用といわれる。高度経済成長期においてはそれらが上手く機能し、社員は会社が定年まで面倒を見てくれると信じてがむしゃらに働けば良かった。そうした中で、社員にとって「懲戒解雇」はサラリーマン人生の死刑宣告にも等しく、社員が会社に歯向かって訴える、不正を告発するなどあり得ないことであった。
主人公のことを思う同期や上司も、経営者の意を汲んでのことではあるが、主人公に穏便に懲戒解雇を受け入れるように進言するが、主人公は自分の正義と名誉を守る戦いにうってでる。

現代は経理のチェックや経費の承認プロセスは厳しく、会社のお金で呑むなんて接待くらいに限られるが、昔は小説内で書かれているように社内の私的な呑み会を交際費として扱うようなことは許されていたのだろう。
密にはルール違反や不正であっても、時代によって組織として何が許されるのか、何が社会の非難を浴びるのかは個々の事情によって変わってしまう。一般社会においても許されないことも、ある会社によっては社内政治や経営層の圧力によって善とされてしまうこともあるだろう。
そうした見過ごされた不正に遭遇した時に主人公と同じように、組織に歯向かう勇気は自分にあるのかを考えさせられた。
終身雇用も年功序列も崩壊し、会社は守ってくれない現代においては、会社の明らかな不正に手を貸すほうが人生のリスクになってしまうのかもしれないが。


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  1. 2017/03/05(日) 19:55:33|
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